After-Sales DX Proposal  /  2026年7月

アフターサービスDX提案書
AIによる24時間自動トラブル対応システムのご提案

技術者の一次対応工数を削減し、切粉自動破砕・圧縮機「NEOPACK」をはじめとする貴社製品のアフターサポート品質と、顧客満足度・業績・製品改良サイクルを同時に引き上げるための構成案です。

提出先
株式会社クリエイトエンジニアリング(VOXA)御中
対象製品領域
自動切粉破砕・圧縮機 NEOPACK 他
本書の位置づけ
ご相談内容に基づく実現方式のたたき台
想定読者
経営層・アフターサービス部門
実施体制
親会社ITグループ統括部が構築・運用、貴社へ月次ご請求

本文中の画面イメージに加え、実際に操作できる構想デモもご用意しました。
→ NEOPACK サポートAI 構想デモを開く(AIチャット相談・点検チェックリスト・管理ダッシュボードを実際に触れる形でご確認いただけます)

01

現状の課題

貴社よりいただいたご相談を、まず現状の構造として整理いたします。

NEOPACKをはじめとする貴社製品は、特許を複数保有する専門性の高い機械であり、稼働現場でのトラブル対応には取説の理解と実機知識の両方が求められます。そのため、顧客からの不具合連絡の多くが電話・メールによる技術者への一次対応に集中し、設計・製造・製品改良に充てるべき時間が圧迫されている状態とお見受けします。

これは貴社に限った課題ではなく、国内製造業に広く共通する構造的な問題です。ベテラン技術者の対応ノウハウが個人に蓄積される一方で言語化・共有が進みにくく、「技術継承」と「顧客対応の均質化」を同時に解決する必要がある、というのが業界全体の認識になりつつあります。

整理すると、解くべき問いは次の3つです。
① よくある不具合を、技術者を介さずに顧客自身が自己解決できる仕組みをどう作るか。
② 自己解決できない場合に、従来通り電話でスムーズに技術者へつなぐ導線をどう残すか。
③ 「誰が・いつ・何に困っているか」のデータを、単なる対応履歴で終わらせず、製品改良とマーケティングにどう還元するか。

02

ご要望と実現方法の対応

ご相談いただいた9項目それぞれについて、対応する実現方式を一つずつ整理しました。

お客様が質問を入力すると、取扱説明書を学習したAIチャットボットが回答し、必要に応じて図解・写真・動画を提示する。自己解決できない場合は電話で技術者に取り次がれる、という一連の対応フローを表す図解
図:想定される対応フローの全体像。お客様からの質問 → 取説を学習したAI(RAGFlow)が回答 → 回答にはテキストに加えて図解・写真・動画を添付 → 自己解決できない場合は電話で技術者へ取り次ぎ、という流れです。
ご要望 1取説・トラブルシューティングを元にした回答
既存の取扱説明書・修理履歴・FAQをナレッジベース化し、RAG(検索拡張生成)チャットボットが該当箇所を根拠付きで回答。想定質問にない内容は「わからない」と正直に答え、電話問い合わせへ誘導します。
ご要望 2チェック箇所・修理内容・調整方法を動画や写真でわかりやすく
回答文に加えて、該当箇所を示す図解・写真・短尺動画を併記。既存の点検写真・図面をもとに、不足するカットはAI画像生成で補完できます。
産業機械の模式図に、投入口・操作パネル・排出口の3箇所を示す番号付きの吹き出しが付いたイメージ例。回答画面でチェック箇所を図解する際のイメージを示す
図:チェック箇所を示す図解のイメージ例。機種ごとの実際の図面・写真に差し替えて、点検・調整箇所を番号付きで案内するイメージです(上図は汎用の模式図であり、NEOPACK実機の図面ではありません)。
ご要望 324時間対応
チャットボットは人手を介さないため365日24時間稼働。営業時間外は「自動応答+翌営業日の電話折り返し予約」を案内します。
ご要望 4よくあるトラブルを示す
過去の問い合わせ・修理履歴から頻出トラブルTOP10一覧をポータル上部に常設表示。検索前に解決するケースを増やします。
ご要望 5日常点検・定期点検の内容を示す
点検周期・点検項目をデジタルチェックリストとして提示。実施記録を残せるようにすることで、点検不備に起因する不具合そのものを予防します。
ご要望 6アカウント取得
顧客(現場担当者単位)にアカウントを発行し、契約機種・購入時期に応じた情報のみを表示。誰の問い合わせかを最初から特定できる状態にします。
ご要望 7サブスクで予算化
月額・年額のサブスクリプションとして費用化。導入形態(商用SaaS/自社ホスティング)によって内訳は変わりますが、いずれも予算化しやすい定額運用が可能です(詳細は5章)。
ご要望 8誰がいつどのような内容でアクセスしたかの解析履歴取得管理
全アクセスを監査ログとして記録し、利用者・日時・質問内容・回答可否をダッシュボードで可視化。ヘルプデスクSaaSの標準機能として提供されるのが一般的です。
ご要望 9解決しなければ電話問い合わせもOK
チャットボットの回答画面に常時「担当窓口に電話する」導線を設置。未解決・低確信度の回答には自動でエスカレーションを促します。
03

システム構成の3つの選択肢

導入方式には大きく3通りあり、コスト構造と運用負荷のトレードオフが異なります。市場調査に基づき、代表的な実在ソリューションで比較します。

方式別の比較(2025〜2026年時点の市場動向に基づく目安)
観点A. 商用SaaS導入型B. 自社ホスティングOSS型(採用)C. ハイブリッド型
代表的な製品 SaaS PKSHA AIヘルプデスク(製造業向けRAG+Teams連携)、AI-FAQボット(軽量FAQ特化) OSS RAGFlow(Apache-2.0、自社サーバーでRAG構築) 自社資産SaaS窓口 の組み合わせ
立ち上げ期間の目安 短い(数週間〜) 長い(要件定義・構築に数ヶ月) 中程度(既存資産の接続が中心)
費用構造 月額課金が中心。FAQ件数やシート数に応じて変動 ライセンス費なし。サーバー費用+構築・保守の内製工数が中心 サーバー費用(小)+窓口SaaS利用料
運用の手離れ 良い(ベンダー保守込み) 要社内エンジニアリソース 中程度
データの所在 ベンダークラウド(多くはAzure OpenAI等) 自社管理下に閉じられる 用途に応じて選択可能
向いている企業 早期立ち上げを優先し、運用工数を抑えたい企業 データ主権・カスタマイズ性を重視し、社内に開発リソースがある企業 既に社内にAI活用基盤があり、投資を無駄にしたくない企業

ご留意:「解決率◯%」「コスト◯円/件」といったベンダー公表値は、調査の過程で多くが根拠不十分と判明しました(7章参照)。本書では検証済みの一次情報(公式ドキュメント・プレスリリース)に基づく事実のみを記載し、性能数値は意図的に割愛しています。実際の解決率は、貴社の取説を用いたPoC(小規模検証)で必ず実測することを推奨します。

A商用SaaS導入型

PKSHA AIヘルプデスクは、Azure OpenAI Serviceと自社開発AIを組み合わせたハイブリッド構成で、製造業の技術継承課題(製品仕様書・FAQ、検査報告書・不具合報告書、クレーム報告書の取り込み)を明示的な対象としています。「FAQ回答→文書検索(RAG)→人による対応」の3段階エスカレーション設計で、稼働開始時に既存FAQが無くても始められる点が特長です。より軽量に始めたい場合は、FAQ件数に応じて月額3〜12万円程度で段階的に契約できる国内FAQボット系サービスも選択肢になります。

B自社ホスティングOSS型

RAGFlow(Apache-2.0ライセンス、Docker配布)は、Word/Excel/PDF(スキャンOCR対応)/画像/Webページなど、製造業の技術文書に必要な形式を一通り取り込める、現時点で最も実績のあるオープンソースRAG基盤です。ライセンス費用が発生せず、CPU 4コア・メモリ16GB程度のサーバー1台から稼働できるため、社内にエンジニアリソースがあればランニングコストを抑えられます。参考として、産業機械の安全マニュアルを対象にした学術ベンチマークでは、最適化された構成で正答率86.66%・1問あたり約0.005ドルという結果が報告されており、自社文書で丁寧にチューニングした場合の到達目標として参考になります。

Cハイブリッド型

RAGとコンテンツ生成の中核部分を自社で構築し、アカウント管理・監査ログ・電話エスカレーションといった「ヘルプデスクの窓口機能」だけを実績あるSaaS(PKSHA型、またはより軽量な国内FAQボット)で補う構成も選択肢になります。自社エンジニアリングでコストを抑えつつ、監査要件やサポート運用の型はSaaSの実績に乗る、という折衷案です。

今回の具体方針:貴社グループの体制上、親会社ITグループ統括部の社内エンジニアが構築・運用を担当できるため、B. 自社ホスティングOSS型(RAGFlow)をベースに、Xserver VPS上での自社ホスティングという形で具体化します。外部ベンダーへの委託費が発生しないため、コスト面でも有利です。詳細な費用内訳は5章をご覧ください。

04

導入ロードマップ

一度にすべてを構築するのではなく、効果を確認しながら4段階で拡張していく進め方を推奨します。

Phase 1・0–3ヶ月

基盤構築

  • 取説・修理履歴の棚卸しとナレッジベース化
  • RAGチャットボットMVPの構築
  • 頻出トラブルFAQの整備
Phase 2・3–6ヶ月

視覚化・点検

  • 図解・写真・動画ガイドの追加
  • 日常点検/定期点検チェックリストのデジタル化
  • 音声読み上げ対応(現場作業向け)
Phase 3・6–9ヶ月

会員化・分析

  • 顧客アカウント発行・権限管理
  • アクセス監査ログ・分析ダッシュボード
  • 電話エスカレーション導線の統合
Phase 4・将来

稼働監視への拡張

  • 破砕圧縮機のセンサーデータ連携
  • AIによる異常予兆検知の実証実験
  • 8章参照
05

概算費用感

グループ内の実施体制を踏まえ、3章「B. 自社ホスティングOSS型」を親会社ITグループ統括部が自社エンジニアリングで構築・運用し、子会社である貴社(VOXA)へ運用実費を月次でご請求する、という具体的な前提で費用を積算しました。

前提条件
・構築・運用は親会社ITグループ統括部の社内エンジニア(担当者本人)が対応するため、外部ベンダーへの構築委託費・追加人件費は発生しません。
・RAGナレッジベースはRAGFlow(OSS、3章参照)を、Xserverの VPS(メモリ16GBプラン)上にセルフホストします。
・親会社が負担するインフラ実費・API利用料を、子会社(VOXA)へ月次のグループ内チャージバックとしてご請求する形を想定しています。

5-1インフラ・運用の実費内訳

月額実費の内訳イメージ(税別・概算、2026年7月時点の公開価格に基づく)
費目内容月額目安
VPSインフラ Xserver VPS メモリ16GBプラン(8コア/SSD 800GB、初期費用0円、12ヶ月契約時の料金)にRAGFlowをセルフホスト ¥7,800
LLM API利用料 RAGFlowのバックエンドLLM従量課金。想定質問数 月300〜1,000件、1件あたり¥1〜10(モデル・回答長により変動) ¥1,000〜10,000
ドメイン・SSL証明書 独自ドメイン取得費(年額を月割)。SSLはLet's Encryptで無料 ¥100前後
バックアップ・監視 VPSスナップショット・死活監視(任意オプション) ¥0〜1,000
社内人件費(追加分) 親会社ITグループ統括部内の既存人員で対応するため、追加採用・外部委託は不要 ¥0
実費合計目安 約¥9,000〜19,000/月

Xserver VPSの料金は2026年7月時点の公開情報(12ヶ月契約時の料金)に基づく概算です。長期契約(24〜36ヶ月)でさらに割安になるプランもありますが、PoC段階では柔軟性を優先し短期契約を推奨します。LLM API利用料は、産業機械マニュアルを対象にした学術ベンチマーク(3章参照、1問あたり約0.005ドル=当時レートで約¥0.8)を下限の参考値とし、実運用での再試行・長文回答を見込んで上振れ側を広めに見積もっています。実際の消費量はPoCで実測のうえ確定してください。

5-2フェーズ別の費用推移

導入フェーズと月額実費の目安(4章のロードマップに対応)
フェーズ内容月額実費目安
Phase 1(PoC)VPS+API実費のみ。質問数は少数(PoC対象機種・質問セットに限定)約¥9,000〜12,000
Phase 2〜3(本稼働)点検チェックリスト・アカウント管理・監査ログ機能の追加により、質問数増加とストレージ使用量が増加約¥15,000〜25,000
Phase 4(将来・稼働監視)破砕圧縮機のIoTセンサー連携(8章)は、ThingsBoard等の別基盤・別サーバーが必要になるため、実現時に別途見積り別途見積り

5-3子会社(VOXA)への月次ご請求額(案)

グループ内チャージバック額の目安
項目目安
実費相当額(5-1合計)約¥9,000〜19,000/月
保守対応工数の按分(任意、目安10〜20%上乗せ)約¥1,000〜4,000/月
ご請求額目安(レンジ)月額 約¥10,000〜25,000

ご留意:親会社・子会社間のサービス提供は、税務上「移転価格(独立企業間価格)」の観点から金額の妥当性が問われる場合があります。上記は実費+工数按分に基づく目安であり、最終的なご請求額の設計(原価回収方式とするか、一定のマークアップを乗せるか等)は、貴社グループの経理・税理士にご確認のうえ確定することを推奨します。

まずはPhase 1(基盤構築)を小規模なPoCとして実施し、実際の月間利用件数・想定質問への正答率・LLM API消費量を確認したうえで、Phase 2以降のご請求額とインフラ増強(VPSプラン変更等)を確定させることを推奨します。

06

期待される効果

07

リスクとご留意点

ベンダー公表値の割引評価が必要です。今回の市場調査では、検証対象とした25件のベンダー・製品に関する主張のうち12件が、独立した裏付け不十分として棄却されました(解決率50〜70%、市場シェア33.2%といった具体的数値の多くが該当)。契約前に一次情報での再確認、または貴社データでのPoC実測を必須とすることを強く推奨します。

08

将来展望:破砕圧縮機のAI稼働監視

ご相談いただいた「破砕圧縮機のAIによる稼働システム」についても、今回のトラブル対応基盤の延長線上に位置づけて検討できます。

まず今回のシステムでアクセスログ・トラブル履歴・点検記録というデータ基盤を整備し、その先の拡張として、機体に取り付けたセンサー(振動・温度・電流など)のデータをAIで解析し、故障の予兆を検知する仕組みへとつなげる、という順序を推奨します。

産業機械に取り付けたセンサーの信号がクラウドを経由してAIに送られ、異常予兆をダッシュボードのグラフで検知するという、IoT予知保全の概念図
図:IoTセンサーによるAI予知保全のイメージ。振動・温度・電流などのセンサー値をクラウドへ送信 → AIが異常兆候を分類 → ダッシュボードで異常予兆をアラート表示、という流れです。
予知保全・稼働監視の代表的な基盤(2025〜2026年時点)
区分製品/プラットフォーム特徴
OSS ThingsBoard 4.2以降 Apache-2.0のIoTプラットフォーム。センサー値の直近データ(既定100件・最大1,000件)をAIルールノードに渡し、OpenAI/Azure OpenAI/Gemini/Anthropic/自社ホスト型Ollama等に接続して異常分類と平易な文章での要約を取得可能。オンプレミス完結構成も選べます。
商用 Siemens Senseye 大規模な多拠点・多資産展開に向いた商用の予知保全クラウド。故障予測と優先度付けを自動化。生成AI機能も継続的に強化されています。

現時点では破砕圧縮機という機種固有の実績が確認された事例は見つかっていません。まずは自社機の主要な故障モードと、それを予兆できるセンサー種別(振動・温度・電流など)を特定する小規模な実証実験から着手することを推奨します。

09

次のステップ

  1. 現行の取扱説明書・トラブルシューティング資料・修理履歴の棚卸し(保有形式の確認を含む)
  2. PoC対象機種と想定質問セット(20〜30問程度)の選定
  3. 4〜6週間程度の小規模PoCの実施(3章「B. 自社ホスティングOSS型」の構成で回答精度を実測)
  4. PoC結果をもとに、月間想定質問数とLLM API消費量を確定し、5章のご請求額(案)を本確定

貴社の情報システム環境・既存契約状況に合わせて、上記のいずれのステップからでもご相談を承ります。