現場の人が手書きした伝票は、社長の確認を受け、事務が金額と原価を入れ、 最後に奉行へ入力されて請求書になります。ここでは実際の伝票をそのまま追いかけて、 どこで何が書き足されるのか、なぜ人の判断が必要なのかを整理します。
全体の流れ
赤い工程は「紙の上で人が書き込む」作業、青い工程は「システムに入力する」作業です。 現状はほぼ全てが紙の上で進み、最後にまとめて奉行へ手入力されています。
いちばんの詰まりどころは工程3と工程6です。 社長が確認しないと先へ進めず、社長が不在の週は伝票が溜まります。 また工程6の奉行入力は、伝票に書いてあることを人が1行ずつ打ち直す作業で、 枚数がそのまま作業時間になります。
伝票の見方
同じ1枚の紙に、現場・事務・社長の3者が別々のタイミングで書き込みます。 色分けして見ると、どの欄が誰の担当なのかがはっきりします。
実例で比較
下の2枚はどちらも同じ伝票(No.501656)です。左が社長確認の時点、右が事務処理を終えた時点。 増えた書き込みが、そのまま事務作業の中身です。
| 書き足された内容 | 例 | どこから調べるか | 自動化できるか |
|---|---|---|---|
| 得意先コード | 3010220 | 奉行の得意先マスタ | できる |
| 型式の補記 | 10W-30 / 50hp | 現場への確認・過去伝票 | 半分 |
| 部品別紙の合計 | 5,740 | 添付した部品明細を合算 | できる |
| 仕入原価(備考欄) | 2,180/338/3,944 | 仕入納品書・価格表 | 半分 |
| 総合計と売上区分 | 37,940 | 計算(28,000+9,940) | できる |
数字はすべて整合しています。 部品別紙の合計 5,740 は明細(620+1,600+380+2,240+200+140+560)と一致し、 原価 6,462 は備考欄の3つの合計と一致、 総合計 37,940 は明細4行の合計とも、受入修繕費28,000+売上金9,940とも一致します。 つまり伝票の中で計算は閉じており、合計や区分は機械が計算できる部分です。
一方で自動化が難しいのが工賃です。 この伝票の「整備 25,000円」は、ベテランか新人か、取り付け場所が作業しやすいか、 客先ごとの慣習はどうかといった判断の結果で、価格表から一意には決まりません。 同じ作業でも「今回はこれでいいよ」と金額が変わることがあります。
いちばん複雑なケース
下は実際にあった「竹下 全自動 TXZ106-170」1台の整備です。 6月9日から7月22日まで、7枚の伝票に分かれています。最後の1枚を除きすべて「継続」に丸が付き、 完了するまで請求できません。




手書きで伝票同士を紐付けています。 7/15と7/16の伝票の余白には「501620 500603」「501621 500604」といった別の伝票番号が手書きされています。 関連する伝票を後から探せるようにするための、いわば手作業のリンクです。 紙を繰らないと関係が分からないため、枚数が増えるほど確認に時間がかかります。
例外パターン
同じ伝票用紙でも、扱いがまったく違うものが混ざります。 仕組みを考えるときは、これらを取りこぼさないことが大切です。
| 種類 | 用紙 | 請求 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自社整備・修理 | 赤 | あり(掛売) | 工賃の判断が必要。継続なら完了まで保留。 |
| 部品販売 | 赤 | あり(掛売) | 部品代のみ。原価は仕入納品書から。 |
| 代理店向け | 緑 | あり | 様式が別。値引がマイナス表記で入る。 |
| 現金領収済 | 緑 | 済み | 再請求は二重請求。領収番号との突合が必要。 |
| 無償訪問 | 赤 | なし | 明細が空。日報としてのみ残す。 |
最後の工程
事務処理を終えた伝票は、最後に会計ソフト(奉行)へ手入力されます。 下は先ほどの伝票 No.501656 を入力した画面です。
紙に書いた内容を、そのまま画面へ打ち直しています。伝票番号・日付・得意先・明細・金額のすべてが二度手間です。
1行ごとに商品コード(00001=部品、00002=整備など)を選びます。これが科目分けにあたります。
奉行には検索欄がありません。「あの部品をいつ使ったか」を調べるには、紙の伝票を繰るしかありません。
紙4行が、システムでは10行になります。 紙の「部品別紙 5,740」という1行が、奉行ではアノード620、エレメント1,600、 アノード380、プラグ2,240、ガスケット200、グロメット140、Oリング560 の7行に展開されています。 合計は5,740で一致します。紙は要約、システムは明細という関係です。
まとめ
ここまでの流れを踏まえると、負担は次の4か所に集中しています。
伝票は必ず社長の目を通ります。社長が不在の週は伝票が溜まり、 その分だけ事務処理と請求が後ろにずれます。紙の束が手元にないと確認できない点も制約です。
工賃を書かずに上がってくる伝票が多く、事務が現場へ電話して確認します。 価格表はあっても、取り付け場所や作業の難しさで金額が変わるため、表だけでは決まりません。
完了まで数か月かかる案件では、現場が「まだ請求していない」ことを忘れ、 同じ作業をもう一度起票してしまうことがあります。紙の束を見比べないと気づけません。
紙に書いた内容を人が打ち直しています。さらに奉行には検索欄がないため、 「この部品をいつ使ったか」という問い合わせのたびに紙を探すことになります。
整理すると、合計・区分・部品明細の展開といった計算で決まる部分は機械に任せられます。 一方、工賃の金額・継続かどうかの判断・関連伝票の紐付けは人が決める部分です。 この境界を意識して、人が決めた結果を早くデータに残せるようにすることが、 いちばん効果の大きい改善になります。