JIT・かんばん / Just-In-Time & Kanban
トヨタ生産方式の 2 本柱の 1 つ。プル型生産の原理と実装。
→ 知識ベース:
knowledge/03-erp-systems/mrp-logic.md(MRP との比較)
1. JIT (ジャスト・イン・タイム)
定義
必要なものを、必要な時に、必要な量だけ作る (供給する)
3 つの原則
| 原則 | 英語 | 説明 |
|---|---|---|
| 後工程引取り | Pull System | 後工程が必要な分だけ前工程から引き取る |
| 1 個流し | One-Piece Flow | バッチではなく 1 個ずつ流す |
| タクトタイム | Takt Time | 顧客需要に合わせたペースで生産 |
タクトタイム
タクトタイム = 1 日の稼働時間 / 1 日の顧客需要数
例: 480 分 / 60 個 = 8 分/個
→ 8 分に 1 個のペースで作れば需要に追いつく
2. プル型 vs プッシュ型
| プッシュ (MRP) | プル (JIT/かんばん) | |
|---|---|---|
| 起点 | 計画 (需要予測 → MPS → MRP) | 実際の消費 (後工程の引取り) |
| 制御 | 中央の計画部門 | 現場 (かんばんが信号) |
| 在庫 | 計画精度に依存 | WIP 上限で制御 |
| 変動対応 | 再計画が必要 | 消費に即応 |
| 適用 | 長リードタイム、BOM が複雑 | 短リードタイム、繰返し生産 |
ハイブリッド・アプローチ
現実の製造業では プッシュとプルの組合せ が多い:
MRP (プッシュ) で材料手配 → かんばん (プル) で工程間の流れを制御
- 長リードタイムの材料購入は MRP (バックワード・スケジューリング)
- 短リードタイムの社内加工はかんばん
3. かんばん (Kanban)
仕組み
かんばんは「生産/搬送の指示カード」。後工程が部品を使うとかんばんが外れ、前工程に「補充してください」という信号になる。
後工程: 部品 A を使用 → かんばん外れる → 前工程に戻す
前工程: かんばん受領 → 部品 A を 1 ロット生産 → 後工程に納品
かんばんの種類
| 種類 | 英語 | 用途 |
|---|---|---|
| 引取りかんばん | Withdrawal Kanban | 後工程が前工程/倉庫から引き取る指示 |
| 生産かんばん | Production Kanban | 前工程に生産を指示 |
| 信号かんばん | Signal Kanban | ロット生産の発注点到達を通知 |
| 仕入かんばん | Supplier Kanban | 外部サプライヤーへの納入指示 |
かんばん枚数の計算
かんばん枚数 = (日平均需要 × リードタイム × (1 + 安全係数)) / コンテナ容量
例:
日平均需要 = 100 個
リードタイム = 0.5 日
安全係数 = 0.2
コンテナ容量 = 20 個
かんばん枚数 = (100 × 0.5 × 1.2) / 20 = 3 枚
かんばんの 6 つのルール
- 後工程はかんばんに示された数量だけ引き取る
- 前工程はかんばんに示された数量だけ生産する
- かんばんなしに生産・搬送しない
- かんばんは必ず現物に付ける
- 不良品は後工程に送らない
- かんばん枚数を減らすことで改善を進める
4. WIP 制限 (Work In Progress Limits)
なぜ WIP を制限するか
リトルの法則 (Little's Law):
リードタイム = WIP / スループット
WIP を減らす → リードタイムが短縮される
| WIP | スループット (個/日) | リードタイム |
|---|---|---|
| 30 個 | 10 個 | 3 日 |
| 20 個 | 10 個 | 2 日 |
| 10 個 | 10 個 | 1 日 |
ソフトウェアでの WIP 制限
- かんばんボードの各列に WIP 上限を設定
- 「進行中」のタスクが上限に達したら、新規着手禁止
- 既存タスクの完了に集中 → スループット向上
5. 受注生産と JIT
受注生産は本質的にプル型
- 顧客の受注 (= 需要の確定) が起点
- 見込みで作らない → 作りすぎのムダがない
- 受注 → BOM 展開 → 手配/製作指示 = プル型の自然な流れ
ただし JIT の課題もある
| JIT の前提 | 受注生産の現実 |
|---|---|
| 繰返し生産 | 毎回異なる仕様 |
| 安定した需要 | 受注のタイミングが不規則 |
| 標準化された部品 | カスタム部品が多い |
| 短い段取り時間 | 品種切替が頻繁 |
中小受注生産でできる JIT
- 材料の JIT: 汎用材料は発注点方式でタイムリーに補充
- 工程間の WIP 制限: 「仕掛は N 件まで」のルールで滞留防止
- 1 個流しの思想: バッチでまとめず、受注単位で流す