在庫管理 / Inventory Management
在庫の分類、安全在庫、発注点、ABC 分析、ロットサイズ決定。 受注生産では在庫を最小化するが、ゼロにはできない (標準材料、汎用部品)。
→ 知識ベース:
knowledge/03-erp-systems/mrp-logic.md§4 (ロットサイズ)
1. 在庫の分類
| 種類 | 英語 | 説明 | 受注生産での扱い |
|---|---|---|---|
| 原材料在庫 | Raw Material | 加工前の素材 | 汎用材料は在庫。特注品はゼロ |
| 仕掛品 (WIP) | Work In Progress | 加工中の半完成品 | 管理対象。受注別に追跡 |
| 完成品在庫 | Finished Goods | 出荷待ちの製品 | ほぼゼロ (受注後すぐ出荷) |
| 購入部品在庫 | Purchased Parts | 外部から購入した部品 | 汎用品のみ在庫 |
受注生産の在庫特性
- 完成品在庫はほぼゼロ (作ったらすぐ出荷)
- 仕掛品 (WIP) が最大の在庫 — 原価管理の対象
- 汎用材料 (丸棒、板材、ボルト等) は安全在庫を持つ
- 特注材料は受注ごとに手配 (L4L)
2. 安全在庫 (Safety Stock)
目的
需要変動 (予想外の受注) と供給変動 (納入遅延) に対する緩衝。
計算式
安全在庫 = Z × σ × √L
Z = サービス率に対応する安全係数
σ = 需要の標準偏差 (日次)
L = リードタイム (日)
| サービス率 | Z値 | 意味 |
|---|---|---|
| 90% | 1.28 | 10 回に 1 回欠品を許容 |
| 95% | 1.65 | 20 回に 1 回 |
| 99% | 2.33 | 100 回に 1 回 |
受注生産での安全在庫
- 製品レベル: 安全在庫は不要 (受注確定後に製造)
- 汎用材料レベル: 安全在庫を設定
- よく使う丸棒、板材 → 安全在庫あり
- 特殊材料 → 安全在庫なし (受注ごとに手配)
3. 発注点方式 (Reorder Point)
計算
発注点 = 平均日次使用量 × リードタイム + 安全在庫
例
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 平均日次使用量 | 5 個 |
| 調達リードタイム | 10 日 |
| 安全在庫 | 15 個 |
| 発注点 | 5 × 10 + 15 = 65 個 |
在庫が 65 個を下回ったら発注する。
受注生産での適用
- 汎用材料 (丸棒 φ50, SUS304 板 t3.0 等): 発注点方式で自動発注
- 受注固有品: MRP (L4L) で手配。発注点方式は使わない
4. ABC 分析
在庫品目を金額の大きい順に分類し、管理の優先度を決める。
| クラス | 品目数 (%) | 金額 (%) | 管理レベル |
|---|---|---|---|
| A | 10-20% | 70-80% | 厳格管理。個別追跡 |
| B | 20-30% | 15-20% | 標準管理。発注点方式 |
| C | 50-70% | 5-10% | 簡易管理。定期まとめ発注 |
パレートの法則 (80/20 ルール)
「全品目の 20% が在庫金額の 80% を占める」
実務での活用
- A 品目: 高額材料、特殊品。受注ごとに手配。在庫を持たない
- B 品目: 汎用部品。発注点方式で適正在庫を維持
- C 品目: ボルト、ナット、消耗品。まとめ買い (箱単位)
5. 棚卸 (Physical Inventory)
棚卸の種類
| 種類 | 頻度 | 対象 | 影響 |
|---|---|---|---|
| 年次棚卸 | 年 1 回 (期末) | 全品目 | 決算に必須。操業停止して実施 |
| サイクルカウント | 通年 (日次/週次) | 一部品目をローテーション | 操業停止不要 |
MRP への影響
在庫データが不正確 = MRP の結果も不正確
正味所要量 = 総所要量 - 手持在庫 (← ここが間違うと全部狂う)
- 棚卸誤差 → 余剰手配 or 材料不足
- 対策: サイクルカウントで A 品目は月 1 回、B 品目は四半期 1 回
6. 在庫回転率
在庫回転率 = 年間売上原価 / 平均在庫金額
在庫日数 = 365 / 在庫回転率
| 業種 | 目安 (回転率) | 在庫日数 |
|---|---|---|
| 量産メーカー | 8-12 回/年 | 30-45 日 |
| 受注生産 | 12-20 回/年 | 18-30 日 |
| 優良中小 | 20+ 回/年 | < 18 日 |
受注生産は完成品在庫を持たないので、回転率は高くなるべき。 低い場合は「長期滞留材料」や「失注案件の余り材料」が眠っている可能性。